テレビュー社(米)の歴史

その1

その2

その3

その4

その5

その6

テレビュー製品年表

テレビューについて
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マーケットにおける信用の確立


数年をかけて、ナグラーは彼自身の望遠鏡に用いるために、好みのプロダクション・アイピース類をまとめて開発した。これらの幾つかは4エレメントの"Plossl"設計だった。彼はこの Plosslセットを、彼が(今後)高級で上質な米国製品への開発に乗り出すにあたって、うまく行くかどうかのリファレンス・スタンダードとして用いた。

TeleVueが最初に広告をうったアイピース製品は、1.25インチ径のバレルを有し、左右対称でスケールされた "Plossl"(4エレメント)シリーズで、1979年のことだった。 その広告では、同焦点設計(望遠鏡のピント調整がどういう状態でも、アイピースを交換する際のピント調整をほとんど必要としない)、視野の明るさやコントラストを向上させるマルチコートの採用、優れた構成素材、アイピース内部の構成パーツやレンズ・エッジを黒色処理するといった技術、それに50度の見かけ視界などにハイライトがあてられた。バレルには一般的な1.25インチ・フィルターが装着できるようになっており、月面観察をより快適にしたり、惑星の微妙な特徴を捉えやすくするための、カラーフィルターやニュートラル・デンシティ・フィルターなどのアクセサリーを用いることができる。

1980年の秋までには、TeleVueは(直販による)7.4mm、10.5mm、17mm、26mmの各焦点距離のものをラインナップして展開していた。それらは1本45ドルだったのだが、1980年10月の広告では、4本のPlosslを全てセットで購入した場合には青いプラスティックのキャリングケースがサービスされる旨が記載された。中でも、適度なアイレリーフの長さや見かけ視界の広さ、それに、ほとんどの望遠鏡との組み合わせで手頃な倍率の得られるなどのバランスに優れたPlossl-26mmは、大変人気のあるものとなり、1980年代から今日に至るまで市場に流通する多くの望遠鏡の標準付属アイピースの中の1本に含まれるようになった。

1本55ドルに価格を上げたのと、1981年8月に雑誌「 Astronomy」に掲載された好評なレビュー記事は全く偶然の一致だったかもしれない。記事の中でレビュアーは「私がこれまでに使ったものの中で最もシャープだ」と述べているが、これはその後の TeleVue広告の中でよく引用されるようになった。




「幻覚剤」

彼のPlosslシリーズの最初の成功により、ナグラーは1980年、TeleVueが「幻覚剤」Nagler-13mmを正式に発表することに自信を持った。1980年に印刷された Nagler-13mmの最初の小冊子には250ドル+送料がリストされている。そこには、当時人気のあった Erfle型広角アイピースとNagler設計を視界の中のスポット・サイズで比較したナグラー手書きの図が含まれていた。 Nagler-13mmのバレルは、2インチ、及び1.25インチどちらの接眼スリーブにも適用できるよう設計されている。プロダクション・アイピース(の多く)は彼が好んだような完全なレベルを維持するために「コンパティブル」には設計されないであろう。

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右 :デイビッド・ナグラー(アル・ナグラーの息子)とTeleVue Nagler-13mmを装着した6インチf5屈折望遠鏡。この写真は1980年に発行されたNagler-13mmの最初の小冊子に掲載されている。セレストロン−8のフォーク・マウントに注目
  <写真提供:David Nagler>



1980年まで、 TeleVue製品の小売販売はメールオーダーでニュヨークにある TeleVue社から直販の形で行われていた。 その後まもなく、Leo Henzel(TeleVue製品を扱った最初のディーラーである)やEd Hirschなど、ほんの僅かの望遠鏡専門ディーラーがTeleVue製品を扱うようになった。Company Seven( カンパニー・セブン)の天文光学部門では、そのスタッフや彼らの友人達が TeleVueアイピースをフィールドで評価し、大変な感動と影響を受けたのち、1984年にそのフルラインナップ製品を扱う業者として加わることになった。

オリジナルのTeleVue Plossl設計は1979年になされていたのだが、1982年にはTeleVue Plossl-32mmが登場した。Plossl-32mmはバランスの取れた収差補正、キレの良さと明るさを有していた。その50度の見かけ視界は、1.25インチ・バレルのアイピースとしては最大の実視界を持つものである。2インチ径を有する Plossl-55mm、及び1.25インチの Plossl-40mmや Plossl-32mmアイピースは、約1年の間を置いて設計された。ラージサイズの Plossl-55mmは TeleVueアイピースとしては初めての2インチサイズの伝統的なアイピースだった。50度の見かけ視界をもつ Plossl-55mmは、1.25インチの Plossl-40mm(43度の見かけ視界と、眼鏡装着者向けの大変長いアイレリーフを有する)や最初の1.25インチ・バローレンズ(2.5倍)等と共に1982年1月までに発表された。その当時、Plossl-55mmは150ドル、Plossl-40mmが70ドル、7.4mmから 26mmまでの Plosslモデルが55ドル、それに2.5倍バローが55ドルだった。

13mmと 21mmの Plosslは、(Plosslシリーズの焦点距離)ラインナップを埋める形で設計された。それらのプロトタイプは、1981年にペンシルバニアのクッツタウンで開催された小規模なアストロノミー・デイ・ショーで紹介された。(その後も)ナグラーは、TeleVue がアマチュア観測者からの沢山のフィードバックや、ロイヤルティやサポートを享受できるよう、それらのイベントをとらえた新製品のデモンストレーションを継続している。

成功の兆しは明らかになってきた。1982年、TeleVue はニューヨークのパールリバーにある施設に社屋を移動した。そして社会での信頼が確立した現在、TeleVue は Nagler-13mmを 9mmと 4.8mmという他2種類の Naglerと共に宣伝を開始した。米国特許#4,286,844"Ultrawide Angle Flat Field Eyepiece"を誇りとする Nagler-13mm 及び Nagler-9mmは、2インチ接眼部にも1.25インチ接眼部にも適合するユニークなバレルデザインにリファインされて登場した。 TeleVueの出荷規格に適合する形で日本で製造されたこれらアイピースの価格は、13mmが200ドル、9mmが175ドル、4.8mmが150ドルだった。

1982年には、TeleVue の2インチ−90度のダイアゴナル・ミラーが発表された。このダイアゴナルは、観察者が2インチや1.25インチ径アイピースの豊富な品揃えを使用することを可能とする。そしてまた、多くの観察者に広角の世界を提供しただけでなく、メーカーによって望遠鏡に付属された多くの質の低いダイアゴナルと交換することで、よりクリアな見え味を供給するものだった。精密加工されたハウジングを採用し、高精度に研磨された平面ミラーダイアゴナル(現在では1/10λ仕様)には増反射アルミメッキ・コーティングが施された。(対物側)2インチ・バレルには48mmサイズの写真や眼視用フィルターの装着が可能であり、ハウジング内部は全面に渡って反射防止コートとバッフリングが施されている。

注:90度のプリズムやミラーを併用した望遠鏡を用いる時、その像は上下が正立で左右が逆になるが、これは、ハイクオリティなミラーや2インチのパノラミックなアイピースによってもたらされるイメージ・クオリティが特別高画質なものであることから、天文や自然観察に於いて通常問題にならない。従って、TeleVue は45度傾斜正立プリズムをオプション供給しているが、それらのプリズムは1.25インチアイピースにのみ適応するものである。さらに、正立プリズムではミラー・ダイアゴナルを用いた場合と同等のイメージ・クオリティを得ることは難しく、それは特に高倍率で分かりやすい。例えば数字を判読するなどの、正立像を必要とする低〜中倍率適用の際には正立プリズムが適している。

Trademarked TeleVue logo used since July 1982

左 :1982年以来用いられている TeleVueの登録商標ロゴ 
  <資料提供:Martin Cohen>



1982年7月、TeleVue は彼らにとって初めての全面(頁)広告を雑誌 "Sky & Telescope"にうった。この広告には、トレードマークであり現在も用いられている白地に黒あるいはその逆のロゴが使われている。広告でフィーチャーしたのは、焦点距離 7.4、10.4、13、17、21、26、40、及び 55mmのTeleVuePlossl(55mmは1979年9月に設計されていた)。また同時に、13、9、及び 4.8mmの Nagler、それに2インチ・ダイアゴナル、2.5倍バロー、及び5インチf4のMPT(Multi-Purpose Telescope:多目的望遠鏡)だった。

"Wide Field" という名称で市場展開される65度の見かけ視界を持つ新しい6エレメントのアイピースデザインの設計は1982年迄に終えられていたが、これらは1983年に発表され、1985年に特許を取得した。当初 19mmと 24mmの焦点距離を有する1.25インチバレルのもの、及び2インチ径の焦点距離 32mmと 40mmのものが提供されたが、 Wide Field デザインは、当時の、より伝統的な広角アイピース設計を収差補正の向上という点で超えるものであることにより観察者等に気に入られた。Wide Field-40mmはアマチュアが使用できる最も大きく重いアイピースであり、また、 Plossl-55mmよりも高い倍率で Plossl-55mmで得られる実視界の(直径で)90%を示すという、固唾を飲む視野を提供した。早い段階で名誉だったことは、マイケル・ルデンコが彼の Wide Field-40mmを使ってレヴィー・ルデンコ彗星を発見したことだった。(一方でデイビッド・レヴィーは彼が共同発見した彗星の決定的観測のためにNagler-13mmを選んだ。)1984年、TeleVueは Wide Field-15mm を追加したが、これは Nagler-7mm 及び Nagler-11mmアイピースの発表後まもなくのことだった。

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