テレビュー社(米)の歴史

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新たな冒険のスタート、そして最初の革命


オリジナル トレードマーク

上:TeleVue社のオリジナル・ロゴ

1977年、 ニューヨークのスプリングヴァレーに創立された「TeleVue Optics Inc.」では、プロジェクションテレビ・レンズの設計やマーケティングも行われていた。 それらは、TeleVueと「Telekit」の商標名を持っていたが、その中の幾つかはなんと「Edmund Scientific」社を通して販売されていた。

しかし、 TeleVueは、これまで光学システムとしてはほんの少ししかその価値を認められていなかったアイピースに革命を起こすことで、天文の世界にその最初の足跡を残すことになる。全ての望遠鏡は、光を集めその光線を「焦点面」で焦点を結ぶ働きをもっており、これが望遠鏡の対物レンズ(もしくは鏡)が形成する唯一の像である、ということをまず理解することが必要である。アイピース(接眼レンズ)は望遠鏡の焦点調節部に装着され、それを前後に動かして調整することにより、望遠鏡(対物)の焦点面をアイピース内の視野絞りに合致させる形で用いられる。アイピースは望遠鏡(対物)によって作られた像を拡大するものであり、そういう意味においては、観察者が得る倍率や実視界の広さを実際に決定するのはアイピースなのである。長年のアマチュア天文ファンとしての経験から、ナグラーは惑星や月のように比較的小さくて明るいものだけでなく、大きく広がった天体やそれらに含まれる星雲や星団などを観察することが好みになっていた。しかしながら当時、大きな集光力と低倍率での広角視界(リッチ・フィールド)の両者を同時に満たす望遠鏡はほとんど無かった。また皮肉にも、僅か存在した広角アイピースも、F値の小さな低倍率の望遠鏡との組み合わせでは、アイピース視野の周辺に沿ってのアス(非点収差)によって像がぼやけてしまう傾向にあった。

望遠鏡用アイピースの開発は本質的にほとんど行われておらず、当時の大部分のデザインはそのほとんどが第二次大戦以前、何十年も前からのものであり、当時市販されていた最高の広角アイピースは、 "エルフレ"( Heinrich Erfle:1884〜1923による )として知られる見かけ視界60〜65度のデザインであった。広角アイピースの為の実用的デザインの基本特許を取得したのは、エルフレがカール・ツァイス・イェナに努めていた1917年のことであり、1918年以降、多くの優秀な双眼鏡や望遠鏡が現れることとなった。エルフレ・アイピースは、特に双眼鏡や軍用光学系のために1917年以降多少の改良が行われた。しかし、ここ数十年間において、天文を目的としたアイピース設計の本当の意味での初めての革新は、"Nagler"アイピース設計の開発と、その少し遅れた紹介によってもたらされた。

前例の無いレベルの非点収差補正を達成することと、非常に広い視野に渡って平坦な像を得ることは、アイピース設計において長年なかなか両立できないゴールであった。ナグラーは、大部分の収差を補正した見かけ視界82度程度の超広角アイピースを造ることは可能であると理解していたが、その場合、どうしても望まれない非点収差(アス)が残ってしまっていた。ナグラーによる革新とは、要求される性能を出すために、特別に適合させた負のレンズ(スマイス・レンズ)を組み込むことにより残留した非点収差を除去したことである。これは全く前例の無いものであり、(ナグラーの)前には誰もアイピースに負のレンズを組み込んでそれらをマッチした形で統合しようとした者はいなかった。1979年、TeleVueの "Nagler"設計に対して特許が授与された。

TeleVue 13mm Nagler drawing from a brochure of 1980

上 :1980年に最初の Nagler-13mmのパンフレットを発表した際に、アル・ナグラー自身によって描かれたイラスト <資料提供:David Nagler>

"Nagler"アイピースのプロトタイプは 13.1mm の焦点距離で製作された。これら Nagler-13mmは全てのパーツが米国製で、空気と接するエレメントには反射防止のためのマルチコートが施された。しかしながら、ナグラーは米国での生産コストが海外での生産に較べて高いことに注目し、また日本の製造業者が、非常に厳しいスペックの下、小さなレンズを首尾一貫して製造する能力を有していることを知り、将来、"Nagler"モデルを日本で生産すること、またその幾つかのモデルを結局のところ台湾で生産することを決めた。

右 :TeleVue Nagler TYPE-II(fl=9mm)設計の断面図
Original Nagler の7要素モデルのデザインに似ている。
Eyeレンズは右側を示す
  <資料提供:Martin Cohen> 

TeleVue Nagler Type II cross section drawing

ナグラー13mm 最初のモデル

オリジナルの Naglerデザインとして知られるようになっていたことは、SF1や SK16 というハイ・インデックスな光学ガラスを4群にして取り入れた洗練された7枚構成のレンズ設計である。空気に接する面には全てマルチコートが施され、光量損失や内部反射によるゴースト・イメージ生成の可能性を低減してのコントラスト向上が図られている。全ての TeleVueアイピースがそうであるように、レンズ・エッジや全ての内部パーツは無反射の黒色処理がなされている。このデザインの興味深いところは、これらアイピースの視野絞りがバレル内部のダブレット・スマイス・レンズの後方にある点である。これらにより、当時の、他のより単純なアイピースに較べて大変高価なものであった

プロトタイプの Nagler-13mmは、非常に大きな5枚のレンズ群を収納する上部ハウジングを負のレンズ(スマイスレンズ)群から取り外すことができるという点でコンパティブルなものであったので、この上部ハウジング部分はそれ単独でも30mmのアイピースとして用いることができたのだが、それ(上部レンズ群)は、それにマッチした負のレンズ群をセットして用いた時に、ナグラーがそのレンズによって提供することを望んだ補正分だけ収差補正の程度が不足したものであった。

左 :オリジナルのTeleVue Nagler-13mm、実物大画像
  <写真提供:TeleVue Optics>


Nagler-13.1mmのアイレリーフは、当時入手可能であった同等焦点距離の他アイピースと較べて、18mmという珍しく長いものであった。しかしこれは、実際には30mmの焦点距離を持つ上部レンズ群についてのものであることを覚えておくこと。この設計はf4までの望遠鏡システムでも優れた収差補正を示す。82度の見かけ視野角というのは「60度視野角のほとんど面積で2倍、45度視野角のオルソスコピックの3倍を超える広さで」あり、また同時にそれは、「他の商業ベースに乗っている天文用アイピースに較べ、おそらく少なくとも5倍という例外的広さの良像範囲」を有している。

ナグラーは、このような革命的ではあるが高価な製品を市場に展開することについて考え直していた。確かに"Nagler"は彼にとって実際に初めて商業ベースに乗せるアイピースデザインではあったが、それが「10倍シャープで、3倍の見かけ視界を持ち、4倍のアイレリーフを有する…」という信じられないような(証明はできるが)アイピースであったとしても、誰が見知らぬ会社からの製品に対して250ドルもの金を支払うだろうか、というディーラー予測を、正に実際にそうであろうと考えた。そこでナグラーは、彼の新しい会社の信用度が社会の中にしっかりと確立されるまでNaglerデザインの市場展開を避けることを決意した。

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