NP101 レポート

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TeleVue-NP101

NP101を購入して早、3ヶ月が過ぎました。この望遠鏡を購入した理由は、もっと気軽に星が眺められないものか?と考えた末の(価格以外は!!)”お気楽望遠鏡”だからでしたが、それは予想した通りでした。自宅ではパノラミック三脚とF2経緯台を組み立ててあるので、星を眺めるときは、筒を載っけるだけです。おかげで平日でも何の苦もなく、気が向いたときに木星や土星をみる機会が増えました。これは赤道儀を組み立てるのにものぐさな私には大きな変化でした。自宅から離れて、月に一度、星を眺めに山に行くときには、F2経緯台にNGCスカイベクターを用いて対象天体が簡単に導入できます。
見え味ですが、申し分無いというのが正直な感想です。月にはさほど興味が無かったのですが、NP101を通して見た月は艶と透明感がある凛としたイメージで”月ってこんなに綺麗だったの?”っと月の美しさを再認識させられました。木星や土星も(これはコントラストという言葉を使ってよいのかよく分かりませんが、視界の背景が濃い黒=スッキリした背景色になり)本体の縞が浮かんでくるようです。400倍にしても像は崩れません。低倍率でも恒星像は小さくシャープで、色収差を感じたことはありません。驚いたのは、昼間見た雪渓でも全く着色が無いことです。3世代前のGenesisも使用しているので、ここ10年にも満たない期間での屈折望遠鏡の進歩には驚くばかりです。よくここまでの望遠鏡を作ったものだと感心してしまいます。
NP101の使い方ですが、F5.4にタイプ5を付けて5度弱のリッチフィールドで網状星雲や北アメリカ星雲なども楽しみましたが、これからは、着色が無く、シャープな像質を利用して今までやったことがなかった星の色を楽しむ重星散歩でもしてみようかと考えています。また、Genesisよりも筒の長さが短いので海外に持っていく機会があるかもしれません。できればハワイの空でこの望遠鏡で眺めてみたいものです。


千葉県船橋市 大鹿 成明(Shigeaki-Ooshika,Funabashi-Shi,Chiba)


大鹿さんに引き続いてレポートをいただきました。ハワイ遠征です。

雑誌インタラクティブ1997年冬号に掲載された沼沢茂美さんの写真と、以前にハワイ島で星を眺めた知人が”7cmの小さい望遠鏡だったものの、
大きい望遠鏡も含めて、今まで見た中で最高の星空だった。”という言葉に触発されて、新月を挟んだ5月中旬にハワイに星を眺めに行ってきました。機材は、このときのために購入したNP101です。ハワイはこの時期には珍しく雷雨に見舞われましたが、雷雨が去った後の晴天という幸運に恵まれ、充分に見事な星空が堪能できました。

ハレアカラ火山(3055mm)

サイエンスシティー(天文観測施設)

ハレアカラ火山からの日没


今回は偶然にも夕空に5つの惑星が集う機会に恵まれました。ハワイの空はさすがに世界の天文台が競って観測地にしているだけあって、高山ゆえの透明度の高さと安定した気流の状態のおかげで星々が天球に張りついてます。水星は既に雲の下で見れませんでしたが、木星は細かい縞が、金星はそのまん丸の姿が金色に、久しぶりに眺めた火星は視直径が小さくなりながらも赤く、揺らぎもなく見えました。唯一土星だけは低空だったため大気の影響を受けていました。地球照をともなった三日月も印象的でした。

月が沈んだ後は春の銀河巡りです。カフルイの町の灯が夜空を明るくしていますが、構わずに望遠鏡を向けます。エッジオンが好みなので、大熊座のNGC3079や、3198、山猫座の2683、子獅子座の3432、その他諸々の小宇宙を眺めます。日本でも猟犬座の4631は小口径に薦められている対象ですが、同じ視野には見えにくいとされている4656があります。ここでは4656が見えるどころか、括れの部分もはっきり分かります。小宇宙は多分、50個以上眺めたので全てを語ることは出来ませんが、10cmでも11等台の銀河は楽勝で見えました。どれを眺めても素晴らしかったのですが、特に印象に残っているのは、上記の4631と4656、中央を横切る暗黒帯の濃淡まで見えた電波銀河5128、それから乙女座銀河団の中で、M84から88の若干4度弱の視野に7個の小宇宙がひしめく様に一度に見れたことです。唯一、4517だけが、ハワイの空でも淡い対象でした。それでも11.2'*1.5'のボーッとした大きさは確認できました。

圧倒的だったのはオメガ星団とエータカリーナです。オメガ星団はこれでもかというくらいに大きく、周囲は分解して見え、エータカリーナは天の川の背景の星々をバックに淡く、そしてO3を噛ませるとまるで写真の様に浮かび上がってきました。このときばかりと南天の対象を眺めていると祭壇座に球状星団NGC6397を見つけました。まばらなタイプなのでM11のように綺麗に分解して見えます。
お気に入りが一つ増えました。

そして真打は低倍率の天の川下りです。4度弱の視野はこれでもかというくらいの星々に埋まっています。ずーっと小宇宙や球状星団を眺めてきたので、圧倒的な星の数の多さと、星の色に感動します。天の川の星々を背景に浮かび上がっている干潟星雲と三裂星雲は見事の一言。さらに三裂星雲の上の反射星雲(これは写真では青く写る星雲です。)まで見えています。同じくたくさんの天の川の星々に浮かび上がるオメガ星雲M17。素晴らしいの一言に尽きます。O3を入れると確かに星雲は浮かび上がってきますが、ここの空ではフィルターを使わない、星々に埋まった生の星雲の視野が一番好感が持てました。網状星雲の濃い部分はやはり天の川の星々を背景に浮かんでいます。ただし、片方の星雲を見るにはO3は必要でした。何気なく覗く視界に名も知れぬ星や散開星団、暗黒帯、星雲が入ってきます。これぞ、リッチフィールドの真骨頂でしょう。望遠鏡をヘラクレスに向けると、池谷-張彗星とM13が同じ視野に入ってきました。このランデブーも格別でした。

望遠鏡で眺めるのに疲れたので裸眼で星空を眺めることにします。そこにはすでにS字を描くさそりが天高く昇っていて、漆黒の闇に浮かぶ暗黒帯を伴った天の川が天球を縦断しています。まさに吸いこまれそうな星空です。天の川の淡い部分がその縁をアンタレスから上方に大きくカーブしています。天の川がこれだけ大きいと感じたのは、西オーストラリアの砂漠で見た時以来でしょうか。また、よく見ると、南斗六星の下の、我々の銀河系の中心方向の最も濃い部分はほのかに輝いているようでした。太陽系が銀河系の縁にあることを念頭に置くと、宇宙からこのほのかに輝いている銀河系の中心方向を眺めることができるとしたらこのように神秘的に見えるものかと思うと畏怖の念さえ覚えました。星見でいつも思うことですが、望遠鏡でしばらく覗いた後に、何気なしに自分の眼だけで眺める星空が、最高で、そして一番の贅沢だと思います。

今回使用した機材は、NP101、ナグラータイプ4-12,22、ナグラーズームとF2経緯台、スカイベクターというナビゲーターです。本来は30mmクラスを持って行きたかったのですが、重量とスペースの関係で省きました。ナグラーズームは60度以上の広角に慣れてしまうと50度という視界は狭く物足りなく感じてしまいますが、広角系のアイピースといえばErしかなく、MHやよくてOrで覗いていた昔のことを考えると、10mmのアイレリーフから来る覗きやすさと、ズーム域で変わらない見掛視界に加えて、ラジアンの像質とそれ以上のヌケの良さが1本で使える利便性がその弱点を補っているように思えます。が、しかし、すでに広視界に慣れてしまっていると見掛視界50度はさすがに狭い!!是非とも、ナグラーさんに広視界のズームを作って欲しいと願うのは私だけでしょうか?


NP101は22mmを使うような4度弱の低倍率でも小さくて鋭い星像を描写できる優秀な光学系ですが、むしろ筒が短い携行性に魅力を感じます。多分、個人旅行で海外に持っていける望遠鏡では最大ではないでしょうか?荷物はスーツケース1個(もちろん中身はビーチで遊ぶためのシュノーケリングギヤも入ってます。)と101用のキャリーバッグ、それから三脚がアメリカ仕様の長いパノラミックだったので、三脚用のバッグの合計3つでしたが、スーツケースに三脚を入れるように工夫される方は2つで済むかもしれません。見たい対象を入れるにはスカイベクターを使えば簡単に導入できるので、かさばる大きな星図も必要ありません。今回使用したのは、いくつか見たい対象を余分に書き込んだポケットサイズのスカイアトラス-フィールド版です。次から次に見たい天体をホッピングしていく様はまさに星空”散歩”です。星を綺麗に眺めるための光学系で、肩肘を張らないで気楽に眺めよう、というのがアル・ナグラーが提唱する星見じゃないかと感じさせてくれるお気楽でお気軽なシステムです。値段もそれなりに張りましたが、海外に持っていけることも分かりましたし、充分に遊ばせてくれる望遠鏡です。


今回のハワイ旅行では星空はもちろん充分堪能しましたが、同じ様に楽しかったのは現地での人との出会いでした。ハワイはアメリカ本土から星の写真を撮ったり眺めたりする人が来るようです。今回のハワイはこの時期ににしては天候が悪かったそうで、2週間滞在して(ここらへんがアメリカ人の羨ましいところです。)やっと天気が良くなったというので登ってきた方がいました。南十字がこの時期に見えるとは知らなかったので、その方にエータカリーナを教えてもらいました。根っからの星好きなのか、翌日出発で滞在最後の日にも拘わらず、CCDやスターパーティの話などを聞きながら、12時頃まで一緒に星を眺めました。池谷-張やオメガ星団、O3を入れたエータカリーナに感動してました。中国からみえた方に、木星、金星、土星、火星、月を見せてあげたら、まさに”アイヤー”と感嘆の声を発してました。日本人の観光客の方も、普段は眺めることの出来ない星空を眺めるために登ってきていて、やはり小宇宙や天の川を見せてあげると、小さいシミながら、そのいろいろな形と何百万年前かの光を見ていることを話すと感動してくれたようです。このような星空を通しての人との出会いと会話。これも楽しいものです?

標高3000mのハレヤカラ山頂の星空は素晴らしいの一言に尽きますが、世界の天文台が立ち並ぶマウナケア、隣のマウナロア、そしてハレヤカラはハワイアン達にとって信仰の聖地と聞きました。科学のためとはいえ、現地の方達には複雑な感情があるようです。したがって、リゾート地とは言え、本来は招かれざる客だったのかもしれません。天体観測所もあるので、車のヘッドライトがそちらに向かないように注意もしました。そんな無礼な珍客に、猛雷雨の後に降るような星空を堪能させてくれたハワイの神々に感謝して山を降りました。


千葉県船橋市 大鹿 成明(Shigeaki-Ooshika,Funabashi-Shi,Chiba)


大鹿さんに第3弾のレポートをいただきました。オーストラリア遠征です。


オーストラリアに旅行に行ったついでに星見をしてきました。場所はQLD州の離れ小島なので、周りには光害と呼べるものはほとんど無く、天の川が綺麗に見えました。暗い空の中に浮かぶ南十字、大小マゼラン雲が旅情を誘います。天の川をタイプ4-22mmで流すと数知れないほどの散開星団が入ってきます。飽きれるくらいありますね。NPは星像が小さく像質が滑らかなので、星の色も含めて散開星団を眺めるとまさに宝石箱を引っくり返したようでした。特にエータカリーナの近くのNGC3532は密集している星の中に一際明るいオレンジ色の星が目立って印象が残りました。南に来たらやはりマゼラン雲でしょうか?25倍・ノーフィルターだと迫力があります。OIIIを付けるとタランチュラ星雲を含めて散光星雲が多いのに驚きます。小マゼランは付随してる球状星団NGC104と362がアクセントを強めているようです。オメガ星団はデカイ。さすがに全天一の球状星団です。エータカリーナは相変わらずフィルターをつけても外しても壮麗で、一度覗くと見惚れてしまいます。エータカリーナ程の華麗さと大きさはありませんが、りゅうこつ座のNGC3199やケンタウルス座λ星の付近に広がる散光星雲、さいだん座のNGC6188も趣きがあって好きです。また、南天の銀河といえば電波銀河NGC5128を忘れてはいけないでしょう。こちらも暗黒帯が丸い本体を横切っている独特の姿を相変わらず見せています。同じケンタウルス座の9等級の銀河NGC4945は20'×4’と大きく明るいエッジオンタイプで、11等の銀河NGC4976と同じ視野に見えます。アンドロメダ星雲よりも天の川銀河に近い射手座のバーナードの銀河NGC6822は淡いながらも天の川銀河の中の惑星状星雲NGC6818と同じ視野に見えます。千光年単位の対象と百万光年単位の対象が同一の視野に見えるのは感慨があります。今回は休暇が主で、星見は2の次でしたので特に力を入れるつもりはなかったのですが、火星や普段見ている北天の天体も眺めていると、気が付いたら知らない間に朝の4時になっていました。南天の魅力と海外に持ち運びができるNPの機動性と光学性能、恐るべしです。

星を眺める時は、その場所の自然の雰囲気も受け入れるようにしています。日本の山の中では、鹿の声や鳥の鳴き声が星見に趣きを加えてくれます。そんなスタイルの星見が好きなのですが、オーストラリアのサブトロピカルに住む動物達は日本の鹿や鳥やタヌキのようにシャイではなく、鳥の鳴き声はTVで出てくるジャングルのそれを思い浮かべます。そんな野趣溢れる中で無心に星を眺めていると、なにやら身近にガリガリと何かを擦る音が...。この島には毒蛇もオーストラリア唯一の猛獣ディンゴー(犬)もいないのを確認しているし、望遠鏡を蹴り倒すカンガルーの仲間もいないはず。暗闇に慣れた目で見ると小さな動物が二本足で立っています。恐る恐るライトを灯けるとそこには...。ポッサムでした。ポッサムが三脚を登ろうとしていたのです。おいおい、驚かすんじゃないよ。さすがのポッサムもこちらが灯かりをつけると離れて行きましたが、5m程行く毎に立ち止まってはこちらを眺めてグーグー唸っています。そういうことを何度か繰り返して草むらとユーカリの林に姿を消していきました。これがオーストラリアの星見なんですね。野趣溢れる迫力のある星見を体験できました。

今回は偶然にも友人が奥さんから望遠鏡をプレゼントされたので、使い方を教えてあげて、木星や土星を入れてあげると彼は大喜びでずっと見入ってしまい、奥さんが用意してくれた夕食も忘れていたのであわや一色即発の場面に出くわすところでした(笑)。自分も星を見る感動は6cmの望遠鏡から始まりました。彼の望遠鏡はFが12なので木星にも強い着色はつかず、2重星のアルファケンタウリも綺麗な金色です。このように感動を与えてくれる望遠鏡を良い望遠鏡と言うのでしょう。初心を思い出させてくれました。


千葉県船橋市 大鹿 成明(Shigeaki-Ooshika,Funabashi-Shi,Chiba)


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TeleVue-101


10cmという小口径でも完璧なまでの光学系があればここまで見えるのか、というのを実感しました。その像こそ主砲20cmニュートンに較べれば少し暗いものの、その解像力や像の切れ、コントラストは10cmとは思えぬ本当に素晴らしいものでした。

火星の輪郭がエッジ立って見えるような素晴らしいシーイングにも恵まれましたが、アキダリウム海の複雑な形状から、ルナ湖にニロケラス、エリスリウム海・マーガレット湾・オーロラ湾からチタニウス・ソル湖に到る複雑な模様、アルギレの白さ、そして非常に小さく収束した北極冠と、5月最初よりは少し小さくはなったものの、衝の日にヤビツ峠の奥の菩提峠で友人達と3人で見た火星像(この時も素晴らしかった)を上回る姿を見ることができました。

薄雲のかかる空の状態から夏の天の川は半ば諦めていたのですが、夜半過ぎには天頂付近から徐々に晴れ間が広がり、網状星雲3態、北アメリカ星雲やペリカン星雲、キャッツアイ、M13、ダブルダブル他2重星等など、そして午前2時頃からは南天も回復して、白鳥座からいて座にかけてのうねうねした天の川の姿を久しぶりに見られて心洗われる思いでした。念願の「101+ネビュラフィルター+夏の天の川下り」も楽しむことができて大変満足しています。天の川を構成する微光星達の中にふんわりと浮かぶ散光星雲達も、以前使っていたプロントの頃を明らかに上回る見え味でした。F5.4という短焦点屈折でありながら、超高倍率でも色収差が全く感じられず、その像質も極めてシャープな鏡筒であるが故のことなのでしょうね。リッチフィールド・低倍率広角視野の真骨頂を味わうことができました。

高倍率での惑星像や二重星、そして低倍率広視界で視野の中に散らばるピンポイントの星々、まさにMPT(=Multi Purpose Telescope)の醍醐味を体験できた思いです。

いつも新しい感動を与えてくれるテレビュー鏡筒、大変気に入っています。

神奈川県秦野市 佃 安彦(Yasuhiko Tsukuda, Hadano-shi,Kanagawa)


冷却CCD撮影鏡筒としての101


tv-101-7天文雑誌に投稿されるCCD画像を見ていると、どの作品も非常に高い拡大率である。これは天体のクローズアップを狙う人が多いためだけではない。35mmフィルムの10分の1以下、ブローニーサイズとの比較では、それこそ何百分の1の面積しかないCCDでは、どうしても狭い範囲の画像しか撮れないのだ。私たちは必然的に光学性能にシビアになりがちなのである。なぜなら、私たちの作品は銀塩写真をルーペで観察されるような立場に、常に置かれているからだ。同じ鏡筒で直焦撮影し、トリミングなしに同じ大きさにプリントしたなら、光学系の収差は銀塩の何倍もの形で作品に表れてしまうのである。101の540mmの焦点距離は、眼視ならリッチェストフィールド、35mm撮影でも短焦点に位置づけられる。どちらで使っても素晴らしい点像の世界が広がり、101の持ち味として評価の高いところである。CCDの世界では中焦点といったところか。(35mmに比べれば、これでも充分に長焦点だが…)ただし、この短い焦点距離で、CCDユーザーを満足させる鏡筒は意外に少ないのである。35mm撮影やリッチェストフィールドをそこそこのレベルでクリアする短焦点鏡筒でも、CCDを使うと「粗」が見えてしまうのである。101はCCD撮影でも「粗」が見えてこない希有な短焦点鏡筒のひとつだろう。諸収差の少なさばかりでなく、天体の淡いディテールまでを美しく捉えてくれるコントラスト性能の高さにも満足を感じている。CCDを使わないユーザーにもこの恩恵は大きい。300倍前後の倍率で木星や土星を見たときに、一般的な短焦点鏡筒を越えた性能を実感できるはずだ。


東京都世田谷区 吉澤 隆(Ryu Yoshizawa, Setagaya-Ku,Tokyo)


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エヌピー・ワン・オー・ワン インプレッション
Sky & Telescope誌 2002年5月号 
By アラン・ダイヤー ( Alan Dyer)


1980年代初頭、Al Naglerが設計し、自ら設立したTele Vue Opticsにより販売されていた屈折望遠鏡により、ある意味で19世紀の遺物と化したある望遠鏡形式への関心が再びかきたてられることになった。第二次大戦後、米国ではニュートニアンや後のシュミットカセグレンが流行する。その後、Tele VueやAstro-Phisics(Roland Christen設計)による屈折望遠鏡の革新が始まり今日に至る。ChristenとNaglerは、より優れたガラス素材と、コンピュータの力を借りた設計を背景に、着実に屈折望遠鏡を進化させ、究極のレベルに到達した。

Naglerの最新作は「NP101」という。これまでのTele Vue屈折望遠鏡と同じように、2組のダブレットを前後に配置した4枚構成。この光学形式は、1841年、オーストリア人のJoseph Max Petzvalが初期のポートレイト写真レンズ用に提唱したものである(Tele VueはNaglerのNとPetzvalのPをとって「NP」とした)。Apoの場合、フィールドフラットナーは後で追加するアクセサリーであるが、NP101の場合、フィールドフラットナーは光学設計全体の一部で、広角アイピースや35mmフィルムの視野周辺までピンポイントの像を結ぶ。NP101の実効焦点距離は540mm(F5.4)、実際の鏡筒長(660mm)よりも短い。今回のテストはTele Vue社から借りたNP101で行う。一目で分かったが、すでに製造中止になっている同社のTele Vue-101やGenesisと比べ、色収差が完全に除かれている。しかも、この究極のアポクロマートレベルを従来のモデルよりも153mm短い鏡筒長で実現している。

メカニズム - 4.9kgの鏡筒は強固なシボ入りの塗装が施され、対物キャップ、マウントリング、接眼部はツヤ消しの黒アルマイトで処理されている。対物セルの周りには内部にフェルトを敷いたフードが収まり、前方に102mmスムーズに引き出せる。接眼部のラックアンドピニオンは精度の高い合焦を実現し、イメージシフトや遊びもない。合焦ツマミノブは凹凸のあるゴムリングが巻かれている。ゴムリング自体は必ずしも高級感をかもし出しているとは言いがたいが、寒い夜空の下ではアルミ地肌のでたツマミよりもつかみ易い。2インチのエバーブライト・スターダイアゴナルと組み合わせても、2インチから1 1/4インチのアイピースをすべて問題なく合焦させることができた。また、両目で心地よい観望を可能にする同社の双眼装置「Bino Vue」も合焦するが、2倍の合焦レンズが必要になる。

光学系 - 偉大な光学系を評するのはたやすい。NP101には収差がない! 以上。これではレビューが終わってしまうので、以下具体的に述べていくことにする。
高倍率で行った星像テストでは、色、非点、球面収差が見られないだけでなく、それぞれの光の波長における焦点内外の不均整さえもない。明るい星はあざやか、合焦したディスクは真っ白、焦点の内外でマゼンタやシアンのリングがない。焦点像はくっきりとシャープなエアリーディスクで、鋭敏なディフラクションリングで囲まれている。あいまいさのない教科書どおりのパターンである。
土星は暗い夜空に浮き彫りにされる。土星の淡い衛星の濃淡だけでなく、環の影の濃淡もはっきりと見て取れる。焦点をずらしても色付きがなく、レンズやコーティングのフィルター効果もないため、木星のディスクも純白だ。そこには、アポ屈折望遠鏡が出すべき光が存在するだけである。
鏡筒内部の遮光もうまく処理されている。低倍率で覗いたときも、視野直外にある明かるい対象から漏れるフレアやゴーストもない。NP101はまぎれもなく世界で最も優れた望遠鏡のひとつであり、同クラスのアポ屈折望遠鏡を超える性能を兼ね備えている。

撮影 - NP101の像面の平坦さは35mm撮影や、メガピクセルのCCDカメラ撮影に威力を発揮する。撮影テストではコーナーにごくわずかなコマかアスがあるが、35mm枠いっぱいにピンポイントの星像を捉えた。他の同F値の望遠鏡と比較すると、NP101の35mm枠のコーナーでの光が若干弱い。ディープスカイ撮影のようにハイコントラスト処理が行われた場合に顕在化するが、このレベルのケラレは画像処理で十分補正できる。撮影に関して注意すべきことは、対応フォーマットが35mmフィルムとCCDカメラに限定されることだ。2インチ接眼部は中判フィルムには小さすぎるし、光学設計自体中判フィルムの大きさには対応しない。

総評 - NP101は眼視・撮影性能ともに妥協なく設計されている。超広視野から、高分解能を要求する惑星まで余裕でこなす。高価ではあるが、多くの天文アマチュアが待ち望んでいた望遠鏡であろう。このような望遠鏡が何年も待たされることなく市場で入手できること自体、すばらしいことである                           ...Alan Dyer


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ワン・オー・ワン インプレッション 
福島県石川郡 近内令一(Reiichi Konnai,Ishikawa-gunn,Fukushima)


近内さんのスケッチ● 「二重星団 h-x」
透明度の高い条件下では、漆黒の夜空をバックに望遠鏡の視野内の星像の様子はいやおうなしにすみずみまで一目で感じ取れてしまい、光学系のわずかな欠陥がどうしようもないほど気になることがある。
SDFにパンオプティック35mmをつけると、他の組み合わせではとても実現できないような、広い視野の端まで完全にピンポイントの星像が得られ、普段見慣れた天界の景勝が、またまったく別物の迫力で浮かび上がってくるのに驚いた。
そのような一例として、ペルセウス座の二重星団と、近接する散開星団Stock 2の眼視インプレッションをお目にかけよう。
この二つの星団は15倍4.2°の視野にちょうどいっぱいにおさまり、しかもそれぞれの星団を構成する星ぼしがみな恐ろしくシャープに見える。したがって、いつもは目立たないStock 2のヒト形の星の配列がぐっと明瞭になり、超強力な二重星団と同一視野でけっこう張り合ってとても楽しい眺めとなっている。

……近内令一(Reiichi Konnai,Ishikawa-gunn,Fukushima)


* 近内氏のインプレッションはSDF鏡筒使用時のものですが、101と同一スペックであり低倍率性能に違いがないため、あえて紹介しました。


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ワン・オー・ワン インプレッション 
テレビュー・ジャパン 天津 博(Hiroshi Amatsu,TeleVue Japan)


● 「網状星雲」
101で天の川領域を掃天していると、導入の意志に関わらず星雲星団のオンパレードを楽しむことができる。また、リッチフィールドの視野にあふれる微恒星はそれ自体散開星団のようで見ていて飽きない。趣を変えて、パンオプティック35mm(15倍)にOIIIフィルターをつけて天の川を流すのも、また非常におもしろい。予期しない対象(散光星雲)が視野に入ってきたりするからである。
観望対象として名の通った散光星雲は、思いの他多くないのではないか?だから意外な対象が案外はっきり見え、驚くこともしばしばである。もちろんフィルター効果に依存することが大きいに違いない。が、最低倍率と広視野が簡単に得られる101のスペックが有利に働いているのも確かである。

前置きが長くなったが、はくちょう座の「網状星雲」もそんな対象の一つである。パンオプティック35mmプラス OIIIフィルターの視野にその全景を捕らえることができる。東側のアーチ状をしたNGC6992-6995と、西側の52番星にかかるNGC6960の両端はもちろん、中央にある逆三角形をした星雲まではっきりと確認できる。カタログ番号がないのが不思議なくらいだ。狭域フィルターのせいで微光星の消えた視野は、異様なほど漆黒で望遠鏡と星雲領域が直結したような印象を受ける。大口径機ではその詳細なフィラメント構造が観望の興味になるが、101で見るその全景は、超新星の爆発によってガスが飛散、拡張し現在の姿になった時間の流れに思いを馳せてしまう。

● 「M46 & M47」
101に低倍率広角アイピースをつけて天の川を流すのはほんとに楽しい。星数の多い夏の天の川もよいが、個人的にはカシオペア座からとも座にかけての冬の天の川が好きだ。星数が少なくなる代わりに、散開星団がより浮き出して見えるからである。

散開星団の観望に大口径は不要である。…正確には、大口径で見栄えのする散開星団は案外少なく、また、リッチフィールドな視野の端までピンポイントの星像が散開星団を美しく見るための条件だと思っているからだ。M46、47とも冬の天の川の宝石である。101にナグラー タイプII 20mm(27倍)をつけ、その両者を楽に同一視野に収めることができる。微光星で構成されたM46と、比較的まばらで明るい星が多いM47は、全く対照的な姿だ。星団領域もほぼ等しい大きさで、まるで視野の中でお互いの存在を主張しあっているようだ。よく見るとM47のすぐ北にNGC2423が『小型M46』的な風情で寄り添っている。もちろん、一つ一つをきっちり観察する(M46中のNGC2438など)ことも大切だが、複数個の星団を同一視野に入れてその対照を楽しむ観望こそ、リッチフィールドテレスコープの本来の目的ではないだろうか。対照することにより、それぞれの対象が一層引き立って見えるのである。誰が見ても無条件に美しく楽しい世界がここにある。


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