株式会社ジズコ

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ディオプトロクスレポート


米国スターパーティーでのデモンストレーション...アル・ナグラー


 2005年5月のテキサス・スターパーティ、RTCM、6月のチェリースプリングス・スターパーティで、テレビューの「ディオプトロクス」乱視コレクターを使用して100を超える対象を眺めながら、ディオプトロクス自体の性能を確認し、乱視用メガネとディオプトロクスとの比較を行うことができました。昼間は60°ダイアゴナルミラーを装着したテレビュー・シックスティとプルーセル32mmで(射出瞳径5.3mm)、用意したディオプトロクス用テストチャートを見てもらいました。夜はテレビューNP-127とパンオプティック35mm、ナグラータイプ4 /12mmで、いくつかの星団を覗くこともできました。目の処方箋を持参しなかった方や、ご自身の乱視の度合いを正確に知らない方がほとんどでしたが、いい機会だったと思います。0.25から2.25ディオプタまで0.25ディオプタ間隔で全10種のなかから、最適なものを試してもらい、いただいた感想をまとめてみました。

● ディオプトロクスは少なくともメガネと同等、それ以上の効果をコンスタントに実感

● メガネがいやな人たちには朗報

● 累進多焦点メガネを使い、望遠鏡や双眼鏡を覗いて困っている人たちは少なくない

● 観望経験の長いベテランなら0.25ディオプタの違いを楽に識別できる

● 乱視5ディオプタの人もいたが、2.25ディオプタのディオプトロクスを2つ重ねて乱視を補正できた

● ディオプトロクスの先端は容易に回転させることができ使いやすい

● 双眼装置と併用した際の効果も大きい

● 昼間のテストチャートと夜の星空で、ディオプタの値に差がない

● 星をよりシャープにとらえ、より淡い対象をとらえることが最大のメリット

● 一般的には、メガネの処方箋をベースにディオプトロクスのディオプタ値を選ぶのが効果的


“ディオプトロクス” オーナーズコメント


ディオプトロクスの発売に感謝するユーザーより...Jim Fitzpatrick, Scottsdale, AZ

 私の天文人生を変えてくれたディオプトロクスに賞賛の言葉をおくりたい。ご記憶かもしれないが、RTMCでのデモで2.5ディオプタを見て「まさにファンタスティック!」と大声を上げたのが私です。
 先週すぐにディオプトロクスを1個注文し、アリゾナ州は標高2300メートルのすばらしい夜空の下、パンオプティック27mm、ラジアン18mm、ラジアン12mmを装着した20センチのシュミカセで覗いてみた。私にとって最大のメリットは、アイピースの視野いっぱいを使えること。とにかくすばらしい。星雲から星団まで何時間も今までにない喜びで見続けた。どんなに長いアイレリーフのアイピースでもメガネを掛けたまま覗かなければならなかった私は、妻からいつも同情されていたものだ。
 偶然にも昨日、年一度の定期健診を受けたが、そこで検眼士にディオプトロクスの使用について相談した。私の場合、右目のディオプタが3.0、乱視入りの左目が2.75だが、ディオプタを高めにすると不要な収差を招きかねないと2.5を奨められた。最終的には2つ目のディオプトロクス2.5を注文し、ラジアン18mm2本をビノビューに装着することで、その使用頻度もいっきに高くなった。

すばらしい結果...Kim D. Colter、MD、Washington、MO

 ディオプトロクス1.25は手元のパンオプティック41mm、ナグラー31mm、ナグラー26mm、ラジアン18mmと併用すると、すばらしい結果をもたらす。ディオプトロクスを500mmのStarmaster f4.3、AP Traveler f6、AP178 f9等、複数の望遠鏡で試したが、瞳径が3mm以上あれば、星像だけでなく木星の衛星がどの望遠鏡でもよりよく見えた。私の場合、瞳径が3mmより小さくても大きくても、ディオプタの値を変える必要性は感じない。
 我々アマチュア天文ファンに真摯な姿勢で関心を寄せ、少しでも快適な眼視観望のために配慮するテレビュー社の姿勢を確認した。

テレビュー・ジャパン レポート...テレビュー・ジャパン】広報係 くどう


 2005年7月、テレビューの新製品、ディオプトロクスが送られてきました。いつもなら、スタッフの天津がその性能を評価して皆さんにお伝えするのですが、何せ「乱視補正」レンズ、天津の鋭眼では太刀打ちできません(笑)。たまたま、いつもは広報を担当する久藤の右目が乱視だったので、ディオプトロクスは久藤の手に委ねられました。久藤の天文歴はベネット彗星と共に始まっておよそ35年と長いのですが、イージー観望派なので、テストしてコメントするのははじめてです。

回折リング レポートに使用した望遠鏡は小さいながら高性能な10cmシュミカセ「スペース10」、アイピースはプルーセル32mmを使いました。射出瞳径はF10なので3.2mmです。なお、右目のディオプタは1.25です。ディオプトロクス1.25を目の前にかざして見ると、メガネをかけたときのようにくっきり見えます。メガネよりクリヤーに見えるのはコーティングのせいでしょうか。観測地は千葉県八街市の自宅です。中秋の名月も過ぎて月の小さな晩、透明度は良く、肉眼で4等星が見えます。そらし目にすると、白鳥座のあたりがぼんやり明るいのが分かります。スペース10の光軸を慎重に調整しました。某社オルソ(笑)とテレビューバローで200倍、星は西にやや傾いたデネブを使いました。シーイングは比較的落ち着いていて、第3回折リングまで見えます。(スケッチ参照。シュミカセは屈折より回折リングがずいぶん濃く見えます。)
光軸がだいたい合ったところで、PL32mmに換えてじっくりデネブを見ました。

スケッチ1 最初のスケッチはディオプトロクスなしです。普段、低倍率で1等星をじっくり見ることはないので、自分でも知りませんでしたが、右目では明らかにアスがあるような見え方です。(普段、観望は左目です。)焦点外像はつぶれていて、もっとも星が鋭く見えるところまでフォーカスノブを回すと、長細いツノが生えたような感じになります。さらにフォーカスノブを回していくと、このツノが短くなりながらぽってりした星像になり、さらに回すと今度は先ほどと90度ずれた方向にツノが見えてきます。焦点内像は逆につぶれたドーナツ状となりました。(このドーナツ状の星像は非常に小さな星像で、スケッチほど大きくありません。合焦直前の星像です。)

スケッチ2 次に、ディオプトロクス1.25を装着して観察しました。焦点を合わせていき、もっとも鋭い星像になったところでディオプトロクスを回転させると、細長かった星像が点像になる位置があります。シーイングのせいで完全な点像とはいきませんが、ディオプトロクス無しの星像に比べ、半分くらいになりました。                    
 回転位置を合わせると、今度は焦点直前の内外像に歪みはなく、そのまま素直に点像へ収束していきます。

 試しに、ディオプトロクス2.0を使ってみました。
使わないときと同じようにつぶれて見えます。補正過剰で乱視に戻ってしまったみたいです。



 さて、じっさいに、散開星団を見てみました。東の空に昇ったプレヤデスでは、輝星がガスに潤んでいる感じがよりはっきりします。微光星は針で突いたようなキリッとした星像です。メガネよりよく見えます。何より快適です。ペルセウス二重星団では、見えるか、見えないかという暗い星が見えるようになりました。全く見えない星が見えてくると言うことはありませんでしたが、今夜の観望は住宅地の中なので、もっと空の暗いところなら見えてくるかもしれません。もし利き目が乱視なら、ディオプトロクスを使うとメガネを使用したときより良い星像で、何より快適に使えます。装着はカンタンなので、ひとつあると重宝するでしょう。


高倍率観測にも大きな効果...カナダ天文誌「SkyNews」より by Todd Carlson


テレビュー社のディオプトロクス。乱視補正のファイナルアンサー?

 昨年の春、木星を見ていると、観測仲間が木星の北赤道帯からループを巻くフェストーンがでていることを口にした。それに気づかなかった私は、再度トライしたがやはり見えない。「失礼だが想像しているだけじゃないのかね」と尋ねたが、そこに見えるじゃないかと言われた。
もう一度覗いたがやはり見えない。がっかりした私はメガネを掛けて再挑戦。こんどはフェストーンがいともたやすく見えるのに驚いた。それ以来、望遠鏡の性能を最大限に発揮するにはメガネを掛けなければならないことを認識することとなった。

 観望時にメガネが必要な人もいれば、そうでない人もいる。近視や遠視なら、望遠鏡のピントを調節するだけでメガネはいらない。ただし、私を含む乱視のある人はメガネを掛けて観望することになる。両目とも乱視の人もいれば、片目だけが乱視という人もいる。そして、多くの場合、乱視に、近視や遠視が混在している。
 1980年代中ごろまで、好むと好まざるとにかかわらずメガネを掛けて観望する人には2つの明らかなディメリットがあった。その1つは、人の目とアイピースのアイレンズとの距離「アイレリーフ」が十分ではないこと。幸いなことに、最近ロングアイレリーフ設計のアイピースが出現したおかげで、メガネを掛けたまま望遠鏡を覗いても視野全域を見渡すことができる。ただし、もう1つの問題「乱視」は、アイレリーフに余裕がある最近のアイピースにも解決できなかった。

 乱視の影響は、アイピースから出てくる光束「射出瞳径」によって変わる。射出瞳径は、アイピースによって得られる倍率に応じて直径が決まる。それは、「射出瞳径=望遠鏡の口径(mm)÷ 倍率」という簡単な公式で求められるのだ。たとえば、口径100mmの望遠鏡で25倍の倍率が得られるアイピースの場合、射出瞳径は4mm。同じ望遠鏡で50倍の倍率が得られるアイピースなら、射出瞳計は2mmとなる。このように、倍率が高くなるにつれ、射出瞳径は小さくなる。
 乱視がもっとも気になるのは低倍率(射出瞳径が3mmより大きい)での観測時だ。高倍率になると乱視が気にならなくなる人もいれば、あらゆる倍率で乱視が問題になる人もいる。今日まで、天体観測家が抱える乱視の影響を補正できる道具はメガネ以外にはなかった。

 革新的なアイピース設計で名を馳せてきたテレビュー社は、最近、乱視を補正するアイピースアダプター「ディオプトロクス」を発表した。ディオプトロクスは乱視を補正するメガネと同じ役割を果たす。これがあればメガネは不要なのだ。
 どのディオプトロクスが自分に適しているかは、自分のメガネ処方箋を調べ、観測に使うほうの目の、円柱の値(ディオプター)を確認する。私の場合、円柱の値が1.00ディオプターなので、1.00のディオプトロクスを選ぶ。ディオプトロクスは、0.25から2.50ディオプターまで、0.25ディオプター単位で用意されているが、万一、ご自身のディオプターが2.50を超えている場合はディオプトロクスを重ねて使用することもできる。双眼装置を使用する人は、メガネの処方箋に従い、左右それぞれの目に適したディオプトロクスを選ぶ。
 ディオプトロクスを使用できるアイピースは、アイレリーフがある程度長いテレビューアイピースに限られる。セッティングに要する時間はわずか数秒。アイピースのゴム見口を取り外し、その代わりにディオプトロクスを装着する。乱視の方向は人によって異なるため、適切な位置にディオプトロクスを回すだけ。テレビューアイピースの中には回転できる機構「インスタアジャスト」が付いているものもあるが、インスタアジャストのないテレビューアイピースの場合はディオプトロクスをわずかに緩めて装着する。観望前に最適な回転位置を見つけるために、それぞれのディオプトロクスにはチャートが添付されている。

 実際にディオプトロクスをアイピースに装着する前、観測する目にディオプトロクスを当て、見え味がどのように変わるかディオプトロクスを回してみた。実際、ディオプトロクスを当てて見たテキストは、自分のメガネを掛けたときよりわずかにシャープに見える。
 試しに4種類のディオプトロクス(0.50、0.75、1.00、1.25)を、低倍率用のパンオプティック35mm、中倍率用のナグラー4 17mmと併用。高倍率には、手持ちのラジアン5mm、8mm、10mmを使用した。使用した望遠鏡は、口径320mm、F4.8の反射望遠鏡、テレビュー社のTV-76屈折望遠鏡、ビクセン社製10cmF9アポクロマート屈折望遠鏡である。
 私はアイレリーフの長いアイピースで見るときでも、メガネを掛けるのをわずらわしく思う。低倍率観望で視野全体を見渡せないのは我慢できない。アイレリーフが十分なパンオプティック35mmで覗くときでさえ、メガネを掛けていれば視野全体を見渡すのに頭を少し動かすことになる。ディオプトロクスを装着し、メガネを外した今、視野全体が楽に見渡せ、それぞれの対象がよりシャープに見える。ナグラー4 17mmでも同じように良好な結果を享受できた。10cmF9屈折望遠鏡で見た低倍率では、35mm、17mmというアイピースで得られる射出瞳径が小さいことと、私の乱視がそれほどひどくないこともあってこれといった変化はない。

 ディオプトロクスを使った高倍率の見え味はいずれの望遠鏡でも改善する。二重星はよりはっきりと分離し、球状星団M13とM92の場合はその核と外側の淡い恒星がより容易に分解した。
 テレビュー社はディオプトロクスが最も効果的なのは低倍率だと言うが、私の場合は惑星を高倍率でみたときに極めて大きな効果があった。普通のシーイングから良好なシーイングまで、何夜もディオプトロクスを使って火星、土星、月を見たが、いずれの対象でもすばらしいディテールをとらえることができた。
 テレビュー社のラジアン5mmで、口径320mmの反射望遠鏡は309倍、ビクセン社の屈折望遠鏡なら180倍が出せる。いずれの場合も、メガネを掛けてみるとよりシャープに見える。しかしながら、ディオプトロクスを装着してみると、メガネを掛けても掛けなくても見えなかった淡いディテールが私の目に飛び込んでくる。その後も、メガネとディオプトロクスを交互に装着することで、自分の思い込みではないかどうか、何度も確かめてみた。それでも、ディオプトロクス装着時には、より細かいディテールが確認できることに間違いはなかった。

 今度は、自分の処方箋から0.25ディオプターはずれたディオプトロクスを試してみたが、解像度の低下は著しい。人によっては、ディオプトロクスを使用するとアイレリーフがわずかに短くなると感じるかもしれない。ディオプトロクスは個人個人の乱視度を補正する目的で設計されている。アイピース装着時に回転させて適切なポジションを得るため、観望会などでの使用には適していない。
 ディオプトロクスのおかげで、もうこれからは観望時にメガネを掛けないで済む。ディオプトロクスが発売されるまでメガネをかけて観望していた長い年月を悔やまずにいられない。


望遠鏡観望のメガネは不要!ディオプトロクス光学系が乱視を補正してくれる
...アストロノミー誌機材レビュー by Mike D. Reynolds


いちばんシャープな星像

 乱視に悩む観測者には待望のアイテムが登場!メガネを外し、乱視のことを忘れて観望に没頭できる。一般的に、望遠鏡はその接眼部により焦点を移動できるので、近視・遠視の目には対応できるが、光線束が複数の異なる点で焦点を結ぶ乱視の場合、像がぼけてしまう。低倍率でのみ乱視の影響を受けるのがほとんどだが、あらゆる倍率で乱視に悩まされるひともいる。
乱視専用のメガネをつくってもらう観測者もいれば、多額の費用を掛け望遠鏡専用に乱視補正レンズを製作してもらうものもいた。こうした問題の解決策を見つけ出すのが、テレビュー社のゴールであった。
ディオプトロクスは、テレビュー社製のロングアイレリーフを備えたアイピースの先端に装着する補正光学系である。乱視の処方はひとそれぞれで、それぞれの眼球でも違いがみられる。テレビュー社では、ディオプタの単位を2.5ディオプタまでを0.25ステップ間隔で用意し、その他に3.0、3.5ディオプタもある。
 メガネの処方箋を見れば、それぞれの眼球に対応する「円柱」の値が+、−で表示されている。私の場合、右目の円柱値が+1.25、左目の円柱値が+0.25だ。右目で観望する私には、1.25ディオプタのディオプトロクスが必要になる。
自身を含め、私が勤めるカレッジの天文部に所属する生徒といっしょにテストした。経験者だけでなく、初心者がどのように感じるかに興味があった。
テストには、テレビューアイピースのほか、ビクセンED80sf APO屈折望遠鏡、ミードLX200-20GPS、クルター25cmドブソニアン鏡筒を使った。暗い夜空の下、コンディションも良く、明るい恒星から淡い天体まで、さまざまな倍率で観測できた。

乱視とは: 角膜の曲がりが不均一である眼球の状態を言う。角膜は球体というよりも、フットボールのよう形状に近い。語源はギリシャ語の“a = without”と“stigma = point”だ。乱視があれば、1つの軸上で焦点がずれる。乱視を診断するには、屈折テストによる標準的な視力検査を受ける。禁止・遠視も同時に判る。乱視を補正するにはメガネを掛けるか、ハードコンタクトを装着する。ソフトコンタクトの場合、補正効果が証明されていない。

 ディオプトロクスは、アイピースについているアイガードを外した後に装着する。次に、ディオプトロクス自体を回転させながら目に合わせて補正レンズを位置決めする。星を覗きながら回転させると、星像がシャープになるのがすぐに判る。使いやすいだけでなく、ディオプトロクスが不要な人が覗くときも簡単に取り外すことができる。
私の場合、3種類の鏡筒すべてにディオプトロクスを装着したアイピースで覗いてみたが、いずれのケースでも改善された星像に感動した。個人的には、とくに低倍率での効果が大きく、高倍率では問題がない。すべてのアイピースの視野周辺までシャープな像を確認できた。
カレッジで天文学の教鞭をとる私には、生徒がディオプトロクスにどう反応するかも楽しみのひとつだ。乱視をかかえた各生徒に最新の処方箋を提出してもらい、円柱値を確認。5人の生徒に、望遠鏡の焦点を合わせたときの星像がどう見えるかをたずねた。このテストではモータードライブを前提にするため、ミードの20センチシュミカセを使う。観察中によけいな気を使わないように配慮した。
5人ともディオプトロクスで星像が改善されたことを認める。ここでは、互いの意見が影響しないように個別に観察してもらう。そのうち2人の生徒が、高倍率で月と土星の詳細が改善されたことを報告。さらに、アイピースを覗きなれていない人に対し、テレビュー社に見落としはないかと、私は生徒の観測データを集め続けた。
結果、乱視のためにメガネを掛けて観望している人には、ディオプトロクスが助けになることを確信。ディオプトロクスに必要な費用は片目分だけで、それまでの世界が一変する。 私自身、当初はテレビュー社のディオプトロクスの効果に対して懐疑的だった。この驚くべき光学系を体験して大きく息を飲んだ私をみて何か問題があったのかと集まってきた友人たちに、「そんなことはない。シャープなビジョンが戻ってきた。もうメガネは必要ないよ!」という私がいた。
Mike D. Reynolds − Florida Community College数学科学学部長。近視と乱視のメガネを常用。


パーフェクトを叶えてくれ処方箋 ...スカイ&テレスコープ誌テストレポート by Dennis di Cicco


 そのコンセプト、光学系、メカニズム、どこからみても、テレビュー社のディオプトロクスはシンプルなデバイスだが、ただ一度観望しただけで、この乱視補正レンズがもたらす恩恵に心から感謝することになった。

天空の見え方は、望遠鏡の性能だけでなく、私たち自身の目の性能にも依存する。望遠鏡の合焦ハンドルを調整すれば、近視や遠視は補正できても、およそ3人に1人が影響を受け、点光源の星像をみだす収差“乱視”は、やっかいな問題。一般的に、乱視をかかえる観測者は望遠鏡を覗くときにメガネを掛ける。

ディオプトロクスの登場により、目の乱視補正機能が、メガネから、望遠鏡に装着したアイピースの先端に移った。ベテランの観測者なら、このアプローチによるメリットが、あらゆるディメリットを駆逐してしまうことが容易に想像できる。マルチコートが施された高品質なディオプトロクスのレンズが、2ダースを超えるテレビューアイピースに装着できることもすばらしい。ネガティブな点をひとつ挙げとすれば、アイピースからの脱着が容易な構造ながらも、異なる乱視をかかえる大勢のひとたちが1台の望遠鏡をかわるがわる覗くスターパーティのようなシチュエーションに対応がむずかしいことだ。

望遠鏡を覗く際、乱視をかかえる人すべてに乱視補正が必要であるとはかぎらないが、誰に必要で、誰に必要でないかに、確固たる科学的裏づけはない。さらに、乱視の問題は、射出瞳径(アイピースの焦点距離÷望遠鏡のF値)が7mmに達する比較的低倍率の光学系で問題になることが多い。

メガネの処方箋には、自らの乱視の状態が記載されている。一般的に、ディオプタ値は、角度を示す+/―符号が付いた“円柱”で表す。自分に合ったディオプタ値のディオプトロクスを選ぶには、ディオプタ値の+/―符号をとった絶対値のみを用いる。乱視のディオプタ値が“2”のひとは、多くの場合、射出瞳径が1mmから乱視が顕在化する。私の場合は0.5ディオプタなので、射出瞳径が4mm以上にならないと実際には判らない。乱視の基準はひとそれぞれに異なる。

赤色巨星のほのかなオレンジ色を視野内で観測していると、非凡なことに出くわした。ひんやりとした夜空下、静けさのなか、望遠鏡がどこかに消えてしまったような感覚。まるで、私のメガネをはじめ、私と星のあいだに何も存在しないようかのような感覚だ。仲間同士を呼び合うカエルの泣き声がなければ、星をちりばめた無限の空間を漂う自分が想像できる。まさに、星見の悟りの境地である。

このことは、テレビュー社のアル・ナグラーが言う“do no harm (害を及ぼさない)”光学系を意味することが理解できた瞬間でもある。1999年6月号のスカイ&テレスコープ誌の記事で、David LevyがNaglerのプロフィールについて語っている。小さな望遠鏡メーカーがりっぱな会社に成長したのはテレビュー社だけではない。セレストロン、ミード、アストロフィジックスをはじめ、さらに小さな会社も、それぞれ似た生い立ちを持つ。しかしながら、テレビュー社の画期的な製品は、偶然か意図してかはわからないが、より多くの天文ファンに、ワイドでアッと言わせるような星空をいつも与え続けている。

二重星を観たとき、私はGlenn E. Shawが残したリッチフィールドテレスコープについての記事を思い起こす(スカイ&テレスコープ誌1980年3号)。Shawも一つの視野にもっとも多くの星をとりこめるのはどんな望遠鏡だろうと思いをめぐらせていた。一方、「容易に観える星の方が、視程の限界で観えるかどうかの星よりもはるかに多い」という合理性も兼ね備えているShawの結論はこうだ。「33mmのアイピースを装着した口径127mm F5の屈折望遠鏡、倍率は19x、射出瞳径は6.6mm。小さくでも、力を秘めたこの望遠鏡なら、われわれの銀河に浮かぶ2兆を越える星を、ほんとうに息を飲むような見え方で捉えることができる。」

私は、まぐれでも、二重星をShawの言う理想的なかたちで捉えることができた。ただ、私の場合、妥協のない光学系に恵まれていた。もちろん、Showが四半世紀前に所有したアクロマート屈折望遠鏡+エルフレアイピースにはないものだ。「これ以上のものはない」と言いきりたいところが、Nagler氏とTeleVue社のことを知る自分には、これが最後だとも言えない。


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