デロス レポート

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テレビュー社の新型アイピース“デロス”ラインをテスト
米国天文月刊誌アストロノミー2011年12月号より

充分なアイレリーフ、広い視界、際立つシャープネスを備えたデロス...by Tom Trusock


 ニューヨーク州で開催された2011 North-east Astronomy Forumにて、同州チェスターに本社を構えるテレビュー社は新型アイピース“デロス”を発表。まずは焦点距離6mmと10mmの2機種。20mmのアイレリーフと72度の見掛け視界を備える。いずれも、別売の乱視補正レンズ“ディオプトロクス”とも完全互換である。

テストの結果、“デロス”はすばらしいアイピースであることがわかった。焦点距離は異なるが、ここではデロスの特性をひとつのシリーズとして紹介する。 今後、デロスはさらにその仲間を増やしていく。この記事が印刷される時点で、次は17mmレンジのデロスが出るという最新ニュースをアル・ナグラーから伝え聞いている。


 星空を観る


 アイピースのテストには、通常、望遠鏡を数本用意するが、私のお気に入りは4枚2郡構成のペッツバール型屈折望遠鏡である。この望遠鏡自体に収差がないので、アイピースの欠陥がはっきりと判る。さらに、他の望遠鏡との組合せもテストできるよう、カセグレン系鏡筒、単焦点ニュートン鏡筒も用意した。

口径85mmのペッツバール鏡筒にデロス6mmを装着すると、月を余裕でカバーできる。星像は視野周辺までキリリとシャープに結ぶ。コントラストもすばらしく、私が所有する最高の惑星専用アイピースと比べても決してひけをとらない。

デロスの内部も詳細に覗いてみたが、いずれにも散乱光が生じない。クオリティの低いアイピースでは、この散乱光のせいでコントラストが損なわれる。

デロスが繰り出すフラットフィールドな像面のおかげで、星野がほんとうに浮き立ってみえる。散開星団はまさに「ベルベットにちりばめられたダイアモンド」。軸上の星像にも、軸外しの星像にもアスがない。ミシガン州Upper Peninsulaの暗い夜空の下で観た北アメリカ星雲 (NGC7000) では、漆黒の背景に星雲の詳細が浮かびあがり、デロスのコントラストの高さがはっきりと示される。

望遠鏡をニュートン鏡筒に切り替えると、環状星雲 (M57) の詳細も際立つ。M57の外側にはいくつかの縞、中心に交差する薄く透きとおった雲、さらに、そらし目で中心星も捉える。総じてデロスから繰り出される光の力強さを感じる。

わかりやすい惑星テスト対象に土星を選んだが、ここでもデロスの優れた性能を確認。雄大なリングのなか、微妙な大気の帯と構造を捉える。デロス内部に散乱光がないため、ここでも視野周辺までの高いコントラストとシャープネスに圧倒される。色づきについて問われれば、デロスは黄色味も青味もないニュートラルな特性と言える。

 デロスのスタイルと数値

テレビューデロスの外観も印象的だ。望遠鏡への装着部は1.25”バレルだが、本体は2”アイピースのサイズを思わせる。アイレンズが大きく、観望に没頭できるよう設計されている。デロスの最も革新的なメカニズムはクイックアジャストアイガード。下のグリップリングをわずかにひねるだけで、アイガードが緩み上下に動く。自分の目に合ったところで、グリップリングを反対に回して高さを固定する。クイック、簡単、直感的な操作だ。アイレリーフが20mmあるため、ガイドなしで正確な目位置を決めるのは少し難しい。アイガードを調整するときは、まずはいっぱいに引き出してから、視野全域が見えるところで固定することをおすすめする。

テレビュー社は同社全アイピースの絞り環直径を公開(http://www.tvj.co.jp/10shop_televue/Data/eyepice.html)。これにより、任意の望遠鏡に装着したときの実視界を求めることができる。

「アイピースの絞り環直径 ÷ 望遠鏡の焦点距離x 57.3」で実視界を算出する。たとえば、焦点距離600mmの望遠鏡に焦点距離10mmのデロス (12.7mm) を装着すると、実視界は1.21度という広視界を得られる。

デロスを使ってみよう

観測時にメガネを掛け、長いアイレリーフを好み、見掛け視界72度の“ピクチャーウィンドウ(一枚の大きな窓)”を好む人には、ディープスカイから惑星まで最高の見え味を提供するテレビューデロスをぜひ使ってもらいたい。



デロスアイピースの誕生ストーリー...by Michael E. Bakich


 新しいデロスシリーズの歴史と開発の内情をさぐるべく、ニューヨーク州チェスターのテレビュー社に電話した。テレビュー社伝説の創始者アル・ナグラーCEOと話ができたので、質問を投げかけてみた。

Q) 「デロス」という名前の起源は?

A) ネーミングについては、いつも社内で喧々諤々の論議を交わすが、デロスのときは簡単に決まった。まずは光学設計者“Paul Dellechiaie”から“Del”をもらう。また、デロスは、光の神アポロンが誕生したギリシャの美しい島名でもある。三つ目に、Dellechiaieが設計したイーソス (Ethos) の“os”をもらったので、両方ともosで終わるネーミングになった。

Q) デロスの開発背景は?

A) デロスシリーズはイーソスの性能から派生して開発された。イーソスシリーズで高い評価を受けたクオリティをベースに、より小さく、より安価なアイピースを目指した。見掛け視界を制限した分、イーソスレベルの性能を維持しながらも、アイレリーフを長くし、設計もわずかに簡素化できた。

Q) デロスの特徴は?

A) デロス設計時の指針は、ユーザーにアイピース自体を意識させないことにある。これは、アイピースを選ぶときの心理に関係している。もとより、とても大きなアイレンズはデロスのコンセプトに欠かせないものだったが、これがユーザーには大好評だった。はっきりと説明することは難しいが、実施に人がデロスの中に入ることができるような没入型クオリティを体感してもらえる。