私が“イメージングシステム”鏡筒とそのアクセサリに専念しているあいだ、1988年テレビュー社にフルタイムで勤務し、今ではテレビュー社社長を勤めている息子のデビット・ナグラーは、光学設計者のポール・デレカイにある先駆的なプロジェクトを指示。2006年、私の休暇中に、二人は見掛け視界100度のアイピースをあらたに開発することで、ナグラー革命の再来を企てる。この見掛け視界でありながらも、歪曲をはじめ、他の収差補正も大幅に前進させ、無色収差でコントラストが高く、ロングアイレリーフというゴールだ。
多才でありながら、“理屈抜きで”性能を出せるアイピースを目指したデビットは、デレカイに設計が実現可能かどうか調査させる。このプロジェクトのゴールが暫定的にでも見込めるまで、二人とも私に隠して事を進めていた。設計が完成すると、デビットは、あらゆる技術進歩を活かした純度の高い像質、組立て品質の高さ、ビジネスとマーケティングの融合をうたうポジティブな特性を表したいと、あたらしいアイピースに“イーソス”と名づける。最初のイーソスは、オリジナルナグラーに敬意を表し、13mmに決める。
2007年にイーソス13mmを登場させた2007年、近くで開催されたアマチュア展示会場で喜び勇んでイーソスを紹介。あまりにも多くの“ウァオ”を聞いた私は、ホームページに技術的詳細を解説。二人の活躍には、心から楽しませてもらった。
2008年、イーソスシリーズに6mm、8mm、17mmを追加し、2010年から2011年にかけ、特別バージョンとして3.7mmと4.7mmを投入。設計評価中、イーソスの見掛け視界100度を、40年前に設計し、“スペースウォーク”アイピースのきっかけになった見掛け視界110度に広げることも可能だとわかった私は、ポールに拍車を掛ける。この見掛け視界110度で月を覗けば、シミュレーターの三角窓から荘厳な月面飛行をみたときに“鳥肌が立った”私と同じ体験ができる。110度のイーソスSXのSXは、“Simulator eXperience”のSとXをとったもの。
2009年、マイク・ロックウッド作の口径508mm、F3ドブソニアンをみた私は、テレビューの広角アイピースに対応できるよう、一歩進んだパラコアを設計するようデレカイに依頼。デレカイが開発したパラコア2を使えば、F3のシステムは、F12相当の像質で性能を発揮する。
2010年、中国からガラスメーカーに輸出されるレアアース素材ランタンのコスト高騰により、ランタンをふんだんに使うラジアンシリーズを継続できなくなる。そこで、イーソスの成功をベースに、他の素材を使い、競争力ある価格で、より優れたシリーズを開発できないかを検討。その結果、あらゆる性能面でイーソスの特徴を引き継ぎ、アイレリーフを20mmに統一した見掛け視界72度の“デロス”が誕生。個別スケールで設計されたデロスの焦点距離は、17.3mm、14mm、12mm、10mm、8mm、6mm、4.5mm、3.5mm。比較的コンパクトな形状は双眼装置にも適し、スライディングロック式アイガードにはディオプトロクスを装着できる。
名前は、光の神アポロが誕生した島“デロス”に由来し、現在“デライト”の設計を担当しているポール・デレカイにちなんで付けられた。
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