株式会社ジズコ

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テレビュー76(セブンティー・シックス)

3月25日

TeleVue-76入手。夜は真冬のような冴えた満月だったので、月をファーストライトに迎えようかとも思ったが、満月を見るために新しい望遠鏡を花粉まみれにするのもおもしろくないので、ファーストライトは見送ることにした。  

3月30日 茨城県美和村花立山

レグルスをファーストライトに迎える。野尻抱影先生のいわれた「インディゴーの伴星」の紫色もよくわかる。次に北極星を利用してファインダーの平行調整をおこない、続いてそのまま北極星の伴星をさがす。この星は主星との離角は十分あるのだが、自体が暗いために7〜8cmでは簡単ではない対象だが、Nagler6/5mm・96倍で容易に見ることができた。

次はミヤウチ30×77双眼鏡を横にセットし、76もNagler5/16mmで30倍にして土星を対象に比較観望。30×77では楕円形の中に二つの黒い半月形があるようにしか見えないが、76だとリングのどちら側が本体の手前でどちら側がむこうかがはっきりわかり、本体がリングにおとす影もまるでリングが本体のむこうに回り込む直前で切れているようによく見える。倍率を上げるとカシニの空隙や本体の縞模様も見ることができるのは言うまでもない。衛星ティタンは、30×77だと土星の光のにじみの中にあるためにやや見にくいが、76だと光のにじみが少ないのではっきり見える。

30×77は土星の周囲ばかりでなく視野全体がやや白っぽいが、76は澄んだ濃紺(もっと空の暗いところなら漆黒になると思われる)なので、土星のバックにちりばめられた恒星も微光星までよく見える。今、土星はエスキモー星雲のすぐそばにいることを思い出し、二つを同一視野に入れてみた。このときは、76とTeleVueアイピースの組み合わせによって得られる視野周辺部までかわらないシャープネスとフラットネスが威力を発揮した。30倍という低倍率でもエスキモー星雲はあきらかに恒星とは違った中央が明るい面積体であることがわかり、土星もエスキモー星雲も視野の端にあるにもかかわらず形がくずれない。

30×77との比較はひとまずきりあげ、次の対象はプレセペ。この有名な散開星団は、その中に主星が黄色で伴星が青色の重星が3組あり(うち1組は三重星)、たいへんカラフルである。76とPanoptic24mmによるクリアーな視界はこの星団の美しさを観賞するには最適だった。プレセペの東2°ほどのところにある11.6等の系外星雲NGC2672。Nagler6/9mm・53倍で臨んでみたが、10cmでもかすかなこの星雲にはやはり力及ばなかった。

私は満天の星空の下で機材のテストだの比較だのにのみ時間を費やすのは好まない。上記のテストは30分ほどで済ませ、後の、月出までの2時間は春の星雲星団や重星,土星と木星をゆっくりと楽しんだ。そのすべてを報告するスペースはないが、M51は、渦巻きはわからないが、親星雲のどちら側から腕が伸びて子供につながっているかがわかり、NGC4565は針のようにするどく細長いだけでなく、中央が丸くふくらんでいるのがわかった。いくつかの星雲は30×77でも見てみたが、ミヤウチの名誉のためにつけ加えておくと、30×77は光学性能で76に劣るかわりに、両眼視という大きな強みを持っており、同じ天体を同倍率でみたときの見え味は76に大きくは劣らない。コストパフォーマンスも考慮に入れると、優秀な双眼鏡だと思う。使用目的のちがう器械を比較したのはあまり意味がなかったといえるだろう。

3月31日 埼玉県大滝村栃本

この夜は前夜より時間があり、しかもテストはせず、楽しむことに専念したので。76で春のメシエ天体をすべて見ることができた。もちろん他にNGC天体も少なからず見た。また、76はよく見える望遠鏡だが、星雲星団はさすがに大迫力でというわけにはいかないので、7.6cmに適当な重星、γLeoアルギエバ,αUMi北極星,ζUMaミザール,αCVnコル・カロリ,εBooプルケリマも見た。どれも伴星の色が美しい重星である。プルケリマを見たときにはNagler6/9mm+2.5xPowermateで133倍にしたので、針で突いたような青い伴星を楽しみながら、主星で焦点像の確認もおこなうことができた。小さな円盤像の周りをうすく均等な回折リングがとりまいた、欠点の認められない焦点像だった。133倍では土星と木星も楽しんだ。前夜よりシーイングが良好で、土星のカシニ溝や木星のベルトの詳細を明瞭に見ることができた。色収差も認められない。この夜はべつにテストをするつもりはなかったのだが、種種の天体を観望しているだけで、76の光学性能が極めて優秀であることを確認できた。

76は接眼部ヘビーである。1 1/4"のダイアゴナルミラーとアイピースを使っても接眼部の方が少し重い。つまり鏡筒は上を向こうとする。しかしバランスプレートはスタイルと重さの点で使いたくない。ところが、うまいことに、F2マウントに76のように径の細い鏡筒を取り付けると、垂直回転軸より鏡筒の重心が下にきて、そのために鏡筒は水平になろうとする。1 1/4"のダイアゴナルミラーとアイピースを取り付けた76をバランスプレートなしでF2マウントに取り付け、鏡筒をいっぱいに前に出す(鏡筒バンドと接眼部を近づける)と、鏡筒仰角35°から60°くらいの間で二つの力がつりあい、快適に使える。垂直クランプを少し締めておけば、その範囲より上向きあるいは下向きでも問題なく使える。

4月4日 山梨県瑞牆山、4月5日 新潟県魚沼丘陵

両日とも主にオライオンミラー仕様スタースプリッター30cmを使い、補助機として76を使って星雲星団を観望。M81・M82,M97・M108,M65・M66・NGC3628等のダブレットやトリプレットは、まず76にNagler5/16mm・30倍で全景を楽しみ、次にひとつひとつの対象の詳細を30cmで観察した。M97とM108のペアは30倍広角でも視野の両端になってしまうが、76にナグラーアイピースの組み合わせは視野の周辺部でも像がくずれないので、このような対象にも好適である(3月30日 土星とエスキモー星雲の項参照)。また、シャープネス,クリアネスともに極めて良好な76は、30倍でもM82が不規則型であることがわかる。

4月7日 山梨県倉掛山

NP101と76を並べて使用。F2マウントをNP101に使ってしまったので、はからずも76とカメラ三脚(中型)の組み合わせの使用感を確かめることになった。振動の面では特に問題はないが、カメラ雲台は、クランプを締めても手を離すと多少のたわみが発生する。対象の仰角が大きい場合が多く、倍率も高い天体観望の場合、これが問題で、76だとPanoptic24mm・20倍でも使いやすいとはいえない。仰角,俯角がそれぞれ30°以内のことが多いと思われる地上観察であれば、30倍でもストレスなく使うことができるであろうことは想像できる。

4月8日 埼玉県丸山

現地到着が24時20分ころになってしまったが、このようなときにセットアップが簡単な76とF2マウントの組み合わせは威力を発揮する。24時35分には観望を始めることができた。25時55分に薄雲が発生してきて、観望を中止したが、このわずか1時間20分の間に、木星,NGC4565,M64,M94,M63,M51,M101,M104,M3,M13,M92,M5,重星のαUMi北極星,ζUMaミザール,αCVnコル・カロリ,εBooプルケリマ(観望順)を楽しむことができた。丸山の空のようなBクラスの空で系外星雲を観望するときは倍率はやや高めがよい。この日は76にNagler6/9mmを組み合わせ53倍で観望した。四つの球状星団にはNagler6/5mm96倍を使用した。四つとも周辺部は星に分解し、それぞれの持つ他にはない特徴も見てとることができた。重星はそれぞれの離角や光度差に応じた倍率をつかったが、色収差が良好に補正された76は主星と伴星の美しい色の対比を存分に楽しむことができた。

4月14日 山梨県瑞牆山、4月16日 新潟県魚沼丘陵

両日とも30cmと併用して春から夏の星雲星団を観望。驚いたのは、私の気に入りの系外星雲、りょうけん座のNGC4631と4656のペア,りゅう座のNGC5907を視野に入れたとき。どの星雲もTeleVue140や30cmですばらしい眺めなのだが、76でも、9.2等の4631はもちろん、10.5等の4656,10.3等の5907の共にきわめて細長い姿をはっきりと確認できた。4631と4656それぞれの伴星雲、4627(12.4等)と4657(10.9等)に力及ばなかったのは7.6cmではいたしかたないであろう。

4月22日 埼玉県丸山

月と木星の接近を楽しみ、ついでに高倍率で月を対象に色収差の様子をみた。色収差はピントが合っていれば、、Nagler6/7mm+2.5×Powermate 171倍で月の縁を見ても、全く認められない。月の上縁と下縁(天頂側と地平線側)で大気差による色にじみが目立つ。ただ、この組み合わせで月が対象だと、視野中心から1/3より外側になると色収差が認められるようになる。これが対物側,接眼側のどちらで発生しているのかは私にはわからない。

接近した月と木星は、Panoptic24mm 20倍の視野に余裕でおさまった。20倍だと、月のクレーターや木星のガリレオ衛星はもちろん、木星の縞模様も見えるので、非常に興味ぶかい眺めだった。このときも、土星とエスキモー星雲,M97とM108のときと同じく、76とTeleVueアイピースの組み合わせによる良好な周辺像が快適な観望をさせてくれた。


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