株式会社ジズコ

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イーソス21mmのレビュー___by Todd Carlson, SkyNews (Jan/Feb 2010)


くっきりした見え味

1982年、光学系の権威、テレビュー社のアル・ナグラーは、画期的な見掛視界82°の アイピースで天文アマチュアを大いにうならせる。そしていま、前例のない見掛視界100°のイーソスは、ただ広いだけでなく、その視界全域でシャープネスを実現したアイピースとして頂点に立った。もちろん、他の高級品同様、イーソスの価格帯はこれまでになく高く、初心者用の望遠鏡をも凌ぐ。ただ、どの世界でもナンバーワンは常に注目を浴びるもの。

広視界アイピースのブレークスルー

視界は広いほうがよいか。ことアイピースに関しては「イエス」、ただし、視野全体でシャープに結像していればの話。ここでは、テレビュー社のイーソスがその設計にたがわぬ性能に達しているかどうかをテストした。

はじめて購入する望遠鏡には、見掛視界が50度ほど、プルーセルなどのアイピースが二三本付属しているが、ほとんどの場合、まずそこから観望をスタートすることになる。こうしたアイピースは実用向きで、天体の見え味もシャープだが、より見掛視界の広いアイピースを一二本追加することで望遠鏡の性能をアップさせることができる。

見掛視界とは、アイピースを覗いたとき瞳に照射する円の幅。天体用としてはあまり使用されないズームアイピースはさておき、一般的に、アイピースの見掛視界は一定なので、その数値がアイピース自体に刻印されている。焦点距離は同じだが、見掛視界の異なる2つのアイピースを比較すると、倍率は同じでも、見掛視界の広いアイピースのほうがより広い視野、すなわち、実視界を得ることができる。ディメリットとしては、見掛視界を広くし、かつ、像を視野周辺までシャープに結像させるには、値段が高くなることだ。

超広角アイピースの時代は、1980年初頭、アル・ナグラーが開発した画期的なナグラーアイピースと伴に到来。見掛視界82°のナグラーアイピースは、見掛視界50°のアイピースに比べて2.7倍も広い視野をもたらし、以後、四半世紀のあいだ、広角アイピースの新たなるベンチマークとして君臨する。

2007年、毎年開催されるNorth East Astronomy Forumとニューヨーク州サファンで開催された展示会で、テレビュー社は見掛視界100°のアイピース「イーソス」を披露。我SkyNewsにも、イーソス13mmが1本評価用に貸与された。

最初にナグラーを覗いたときの驚きは今でも記憶に残るが、長い年月が経ち、いまでは見掛視界82°になれてしまっている。問題は、82°から100°の違いがいかほどかということ。端的に言えば、そこには「極めて大きな」違いである。

自前のテレビュー76_F6.3アポ屈折望遠鏡にイーソス13mmを装着すれば、実視界2.7度を37倍で見せてくれる。恒星は端から端までピンポイントに結像。軸上、軸外とも、収差はまったく感じない。イーソスを外して見掛視界82°のナグラータイプ6_13mmに戻すと、さすがに落胆せざるをえない。イーソスにより50%増えた天空域の違いは明らか。さらに、イーソスがもたらす広い視界は、より楽しく、リラックスした観望を提供してくれる。

やたらと視野の広いアイピースを覗くとき、視野全域が見える位置に目を置きにくいこともある。はじめてイーソスをのぞいたときもブラックアウトをわずかに感じたが、イーソスの「スイートスポット」になじむのにそれほど時間を要すことはなく、15mmある快適なアイレリーフもあいまって、問題はすぐに解消した。 最初は目をイーソスのアイガードにしっかりと押し付けないと、視野全域をとらえることができなく戸惑っていたが、これもアイガードを折りたたむことで解決。ありきたりな表現だが、「目の前からアイピースが消え、広い窓から深遠な宇宙をのぞいている」かのような感覚に陥る。 望遠鏡のF値が8より小さければ、ほとんどのアイピースで視野周辺までシャープな星像を楽しめるだろう。収差補正レベルの高いアイピースの真価は、300mm F4.8のニュートン鏡筒などのF値の小さな望遠鏡で発揮される。

このきびしいテストにもパスしたイーソスは、F4.8のニュートン鏡筒でもほぼ視野全域でシャープな星像を結ぶ。F4.8ニュートンの視野周辺にはコマ収差が生じるが、この点でも、イーソスはナグラー6_13mmを凌ぐ。 イーソスはナグラー6_13mmに比べてかなり大きいが、590gという重さは驚くべき軽量といえる。

イーソスは「必須」のアイピースか? 使うひとによって、「イエス」ということだろう。大口径ニュートン鏡筒のユーザーは、とりわけより広いディープスカイを享受できる。ただし、前述のとおり、一度イーソスをのぞいてしまうと、他の広角アイピースの視野が圧倒的にものたりなくなってしまう。

この記事はイーソスを、すでに好評のナグラーと比較することを意図したものではないが、ナグラーアイピースが25年ものあいだ広角アイピースの基準となり続けたいま、イーソスの引き合いに出されることも当然のこと。 広角アイピースのハードルをまた一段上げたのが、テレビュー社の「イーソス」である。

著者Todd Carlsonのプロフィール - 天体観望・撮影にも熱心なオンタリオ州在住のアシスタントエディタ


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