株式会社ジズコ

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イーソスアイピースのテストレポート ”3桁の視界”___Dennis di Cicco、Sky & Telescope (October 2008)


ディープスカイ観望を変えるテレビュー社の新しい13mm

今年7月ディオプトロクスのテストレポートでは、テレビュー社が積み重ねてきた広視界観望の長い歴史に触れた。テレビューの創設者でもあるアル・ナグラーのことについて考えていた私は、「広視界観望」というテーマについて彼からはまだ最後のことばをきいていないことに気づく。
まもなく、テレビュー社から、極めて広い見掛け視界100°のイーソス13mmが登場。他の天体用アイピースとくらべても、直径で20%上回り、視野領域は50%広い。光学の世界で、このような驚くべき偉業を成し遂げたのがイーソスである。
テレビュー社はすでに、ニューヨーク、テキサス、カリフォルニア、インディアナのアマチュアには、イーソスのプリプロダクションモデルを披露。体験した多くのアマチュアに好評を博したイーソスは、その後の設計変更なく、10月の発売に向けて生産に入る。弊誌には、最初に作られたイーソスが貸与された。生産モデルとの違いは、バレル面の彫刻と形状だけ。
高く評価できるところ 評価できないところ
前例のない見掛け視界100° 軸外

軸上のすばらしい像

多くの場合、双眼装置には大きすぎる(最大眼幅65mm)
- 1981年当時、前例のない見かけ視界82°を誇る初代ナグラー13mmは、その名を世界にとどろかせた。かつてアル・ナグラーはより広い視界の設計を手がけてみたこともあるが、このアプローチが現社長であり、アル・ナグラーの長男デビッドにより再度行われたのはごく最近のこと。デビッドによれば、「イーソスの光学設計は、永年テレビュー社に勤めるポール・デレカイの才能と融合」、「テレビュー社の名にふさわしい見掛け視界100°のアイピース」とのこと。
アル・ナグラー、デビッドとも、イーソスのレンズ構成については何も語らない。しばらくは、イーソスを覗いた人に評価してもらいたいそうだ。
大きさの割には軽いイーソスを手にすれば、内部のエアースペースが大きいことがわかる。実際、イーソスの重量590gは、テレビュー社の現行ラインナップのなかで6番目だ。
イーソスが届いた最初のクリアの夜空のもと、たそがれどきの空に明るい恒星が現れる前、TV-NP127(口径127mm F5.2)屈折望遠鏡で観望を開始。倍率は50倍、およそ2度の実視界をながすと、シャープで、ひずみも色もない水星のきらめく半月をとらえる。時が経ち夜空の背景が暗くなると、ゴーストや散乱光がないことも確認できる。
次にふたご座に散開した恒星を入れる。イーソスの視界はとても広いので視野全域を見渡すため眼球をぐるりとまわすと、いきなり周辺までピンポイントの恒星が飛び込んでくる。周辺までかなり厳しい見方をしたが、視野全域で明るくシャープな恒星を確認できる。
視野中心と周辺のピント位置のごくわずかなズレに気づくが、TV-NP127is F5.2のレーザーシャープ、対物の比類ないフラットネスを前提に語れば当然のこと。焦点調整能力の高い私よりも若いひと、像面のフラットでない望遠鏡、よりF値の大きな望遠鏡なら、このズレを識別するのはより困難だろう。いずれにしても、イーソス + TV-NP127isでみた星の輝く夜空は「すごい」としか言いようがない。
青白く光る月の突き出した部分の色縁がなく、私が所有するオリジナルナグラー9mm、ナグラータイプ2の12mmと比べ、月のディスクはより白く見える。その月を視野周辺に移動したとき私の目が視野中心にないと、月の縁には細い緑の線が見え隠れする。月を視野から外したとき、恒星では気づかなかったごくわずかな糸巻き現象がイーソスの光学設計に残っていることがわかる。アイレリーフは15mm、「インゲン豆現象(目位置を動かすと動く黒い影)」はない。イーソスは昼も夜も楽しめるアイピースだ。
S&T評価のまとめ
1981年登場のオリジナルナグラー13mm同様、革命的アイピース「イーソス13mm」。今日の広角アイピースのニュースタンダードが確立された。前例のない100°という見掛け視界にもかかわらず、軸上の性能も他のアイピースにひけをとらない。
イーソスの場合、100°という見掛け視界を実現しながらも、軸上の性能は犠牲にしない。同じ焦点距離の高性能アイピースとも比較したが、軸上の性能でイーソスを上回ったアイピースはない。ハイコントラストでゴーストのないイーソスは、超広角設計なりの価格をいとわなければ、惑星用としてもすばらしい。
イーソス + TV-NP127(口径127mm F5.2)屈折望遠鏡での観望は実に楽しく、中〜大口径の反射望遠鏡で広角アイピースをのぞいてみたいアマチュアは少なくない。次に、30センチF5のニュートン鏡筒でイーソスをテストする。計算上、倍率は118倍、実視界0.84度も、月の全景を十分にとらえることできる広さ。
ペルセウスの二重星団の写野1.8度のなかに描いた円は、それぞれ、30センチF5鏡筒に装着した見掛け視界100°のイーソス13mm、見掛け視界82°のオリジナルナグラー13mm、見掛け視界50度のプルーセル13mmでみたときの円を描いてみた。
思ったとおり、このままではF5ニュートン鏡筒のコマ収差がめだつ。テレビュー社のパラコアを加えれば、星像は視野周辺までピンポイントだが、倍率は15%アップの136倍に上がり、視野は0.72度と狭くなる。どちらがよいとも言えないので、パラコア無しのシステムとパラコア付きのシステムをそれぞれ同じだけ運用してみる。
30センチ鏡筒の場合、通常、スターホッピングには広角アイピースを使い、詳細をみるときには高倍率アイピースを使うが、イーソスはその両役を一本で果たしてくれる。スターホッピングに十分な広さがあり、かつ、淡い恒星を浮き立たせ、銀河や星団の詳細を分解するだけの倍率がある。
心ときめく体験をした。ヘラクレス座の球状星団M13は、何千もの恒星が不規則に広がる天球のように見え、曲がりくねった弧を描いて外に広がる。M13は、球状星団を見張る2つの7等星を容易に包む広視界のなかに浮かぶ。
イーソスに代わるアイピースはない。明日、30センチ鏡筒とアイピース1本で砂漠の中で孤立することになれば、私は迷わずイーソスを持っていくだろう。
1981年登場のオリジナルナグラー13mm同様、革命的アイピース「イーソス13mm」。今日の広角アイピースのニュースタンダードが確立された。今イーソスを手にしてスターパーティに出かければ、長蛇の列ができること請け合い。 ところで、今月をもって本誌でアル・ナグラーを紹介してから50年という年月がたつ。1957年10月号の590ページには、バーモント州、ステラファンに展示したアル・ナグラー自作の20センチニュートンを掲載している。いまから50年経ち「ナグラー」の名がまだ本誌に残っていたとしても驚くことはない。

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